2023.07.07

生産者の思いに応えたい!石井食品と大府市が取り組む「あいちの伝統野菜」の保存・生産者をご支援する取り組み

石井食品は、「地域と旬」の取り組みのもと、日本各地で発掘した旬の食材をもっと広く知っていただくための活動を行っています。

前回は、石井食品の中でも地域プロデュースチームで「地域と旬」の取り組みを率いている三谷さんに、地域とつながる石井食品のこだわりについて聞きました。

今回は中でも「あいちの伝統野菜」として認定されている「木之山五寸(このやまごすん)にんじん」と「知多 3 号たまねぎ」の保存・普及の取り組みについて、担当の平山さんにお話を聞きました。実は、この取り組みで生まれた商品たちは、まだ愛知県内でしか販売されていないものがほとんどです。全国展開できるよう頑張りますので、ぜひ応援よろしくお願いします!

平山 洋之
名古屋営業所 所長。2019年に名古屋営業所に赴任するとともに、大府市のプロジェクトを引き継ぐ。

 

2017年から始まった大府市×あいちの伝統野菜生産者×石井食品の取り組み

— 愛知県大府市とは、これまで6年間にわたって一緒に取り組みを行ってきました。現在行っている取り組みはどんなものでしょうか?

大府市で採れる「あいちの伝統野菜」を使って、石井食品が商品開発を行うことで、野菜のPR活動を支援しています。生の野菜は日持ちしないため、加工品にすることでよりたくさんの方・広いエリアに伝統野菜をを広げていくことを狙いとしています。最近では農協の皆様が、石井食品の商品をお土産として活用いただいています。

2017年に活動を開始した際は、知名度向上を第一としていましたが、現在は伝統野菜の保存・普及に向け、より踏み込んだ活動を行なっています。その活動を後押しするため、2023年は企業版ふるさと納税制度を活用し、石井食品から寄付を行いました。

— 石井食品は各地の伝統野菜とご縁があります。この「あいちの伝統野菜」とは、どんな野菜のことなのでしょうか?

あいちの伝統野菜には4つの定義があります。

  • 昭和30年頃にはすでに栽培されている

  • 愛知県に由来する地名や人名が名称についていること

  • 今でも種や苗があること

  • 種や生産物が手に入る状態であること

*出典:一般社団法人日本伝統野菜推進会、伝統野菜都道府県別一覧 日本の伝統野菜-23.愛知県(参照日 2023年6月30日)

これらの条件に当てはまる野菜が、愛知県内で37種類指定されています。
中でも大府市を産地とする伝統野菜は3種類。

  • 木之山五寸(このやまごすん)にんじん

  • 愛知縮緬(ちりめん)かぼちゃ

  • 知多3号玉ねぎ

このうち、にんじんと玉ねぎを使って、石井食品の商品を開発しています。

木之山五寸(このやまごすん)にんじん

プロジェクトの発端は石井食品の「厳選した素材探し」から

— 石井食品が守り続けている三大原則のうちの一つ「厳選素材」を追求し、地域のみなさんが手間ひまをかけて育てられた食材とコラボしてきました。この大府市との取り組みは石井食品の中でも早期に着手したプロジェクトですが、きっかけは何だったのでしょう?

一番はじめに大府市の市役所に伺った石井食品の社員である三谷さんがきっかけを作ってくれました。石井食品で営業を担当する社員は、日々おいしい素材に関する情報を収集するため、各地域の役所や農家さんに日々飛び込むこともあります。7年前、大府市役所にもお伺いし伝統野菜の存在を教えていただいたことから、石井食品の商品とも相性が良いにんじんと玉ねぎを使った商品開発が始まりました。

— 伝統野菜の生産者さんが減少傾向にあるそうですね。なぜこういった伝統野菜は、生産する方が減ってしまうのでしょうか?

通常の玉ねぎやにんじんを生産することのほうが、伝統野菜の生産よりも手間がかかりにくいという現実があります。品種改良などで病気に強く、形もよく生産できるようになった野菜を育てる方が、効率は良いのです。そのため、伝統野菜だけを生産して食べていける農家さんは多くはありません。手間もかかるため、伝統野菜は値段も高くなりがちなので、消費者の方も手が伸びにくくなります。

そんな現実がある中、農家さんにとっても、消費者の方にとっても、Win-Winの関係が作れないと、このまま生産量は減っていきます。

「伝統野菜」は、独特のおいしさや味わいがあります。地域の特産品としての価値も高いので、農家さんとしても「自分がやらねば!」という使命感を持って生産してくださっている方が多いです。そんな方々の力になるためにも、石井食品が協力しているのです。

過去に手がけたハンバーグ、スープ、まぜごはんの素(現在は発売していません)

「あいちの伝統野菜」の保全に向けた新しい兆し

— 今年は新規就農者もいらっしゃったと聞きました。

そうなんです。浅田さんという農家さんをはじめ、合計2名が新たに伝統野菜の生産に参画してくださいました。2024年の生産分から、石井食品の商品にも活用させていただく予定です。

商品としての活用が見えていれば、農家さんも安心して新規参入していただけると思います。

そんな農家さんを応援するためにも、地元の大府市でもあいちの伝統野菜を生産する農家さんを応援してもらうために、認知度を上げていく必要があります。今年は大府市にある吉田保育園の園児のみなさんと収穫体験のイベントも行いました。

この他にも、愛知在来種保存会の講演活動に参加させていただいたり、道の駅でのイベントに一緒に参加することもあります。

これらの活動を続けてきたことで、今年は大府市から感謝状をいただくことができました。

(左)大府市長 岡村秀人氏
(中)石井食品株式会社代表取締役社長執行役員 石井智康氏
(右) 石井食品株式会社 前会長 石井健太郎氏

普通じゃない?石井食品の地域と素材に対する思い

— これまで色々な活動を行ってきたと思いますが、普通の食品会社ってこんなに地域に特化した活動を行っているものなのでしょうか…?

もし石井食品以外の会社で働いていたら、こんな取り組みに携わることはなかったのではないかと思います。これも、前任の三谷さんが開拓してきたおかげです。
私の職種は一般的に言えば「営業」です。営業が行うことは、より多くのスーパーで、当社の商品を取り扱っていただく活動です。

しかし、石井食品は違います。地域の人との会話を通して、消費者のみなさん、地域のみなさんに対し、「売り上げ以外でも何か貢献できることはないか」と考えることもミッションなんです。なので、営業メンバーは常に素材に対してもアンテナを張り続けています。

私が所属する名古屋営業所は、千葉の船橋本社のように、工場と近いエリアではありません。だからこそ、この土地にいる石井食品のメンバーは我々営業だけなのです。営業のメンバーが原料調達の観点でも活躍できることは、食品会社としても強みになっているはずです。

営業自身が現地で農家の方々とお話しをして交渉も行います。その地域の素材を使った商品を、地元でどのように売っていくかの戦略を練るところから一緒に協力できます。自分で発見してきた素材を使った商品を売ることになるので、営業活動に対しても思いが一段と強くなります。

知多3号玉ねぎを使って開発したスープとハンバーグ
(2023年はハンバーグのみ、地域を限定して販売予定)

— 「あいちの伝統野菜」を生産する手間ひまはもちろんですが、石井食品の手間もかかる活動ですね。ここまでして石井食品がこの活動に取り組む意図はなんでしょうか?

地域と一緒に小さくとも地産地消のサイクルを回すことが、農家のみなさんへの応援になると信じているからです。私は今まで、転勤で千葉県、山梨県、静岡県、栃木県、群馬県など、様々な土地に住んできました。農家さんに教えていただいたのですが、土地によって土や水が異なるので、野菜の味もその土地ごとに異なるそうです。その結果、その土地で育てられた野菜の味も異なります。よく「生まれ育った場所の水と土はおいしく感じる」なんて言いますよね。

それに、農家さんによっても生産方法のこだわりがあるので、同じ品種の野菜でも、生産者さんによって味の違いがあります。また、生産された年度によっても気候の差があるので味も変わります。

こんなに違いが出るものなので、本来であれば「農家さんの名前を見て、野菜を買ってもらう」のが理想だと考えている農家さんは多いです。しかし、流通や販売の仕組みや、消費者の意識変革が必要であり、そう簡単に実現できるものでは無いのも事実です。だからこそ、石井食品が伝統野菜を使った商品を開発し、販売の過程で農家さんの取り組みなどを紹介することで、理想の形に近づくお手伝いをしているのです。

ここからは個人の意見ですが、石井食品が農家さんを応援するのは、自社の利益のためだけではないと思うんです。伝統野菜を使った商品は届けられる量が限定的です。現に、この記事で紹介した商品は、オンラインストアでの販売はありません。

難しい取り組みではありますが、これからもおいしい商品を提供するために、支えてくれている農家さんと共存できる道を模索できたらと思います。いつか知多3号玉ねぎを使った、独自の味わいのミートボールの販売ができたら嬉しいですね。

— 平山さん、ありがとうございました。