地域の魅力を全国に届けたい。石井食品が取り組む「地域と旬」のハンバーグ物語
石井食品は、「地域と旬」というスローガンのもと、日本各地で発掘した旬の食材をもっと広く知っていただくための活動を行っています。
全国各地には、とてもおいしいけれど近隣の地域でしか食べられていない野菜がたくさんあります。石井食品が旬の野菜を加工して商品にすることは、食材としての保存期間を延ばし、より広い地域の方に召し上がってもらう機会を作ることにつながる取り組みなのです。
今回は地域の玉ねぎを使ったハンバーグに長く関わってきた、石井食品素材価値開発部の三谷さんにお話を聞きました。
2001年に新卒で石井食品に入社し、今年で勤続23年目。現在は八千代工場素材価値開発部にて、地域プロデュースチームのマネージャーを務めている。
地域との繋がりから生まれる新しい商品
— まずは「白子玉ねぎのハンバーグ」について教えてください。この商品が生まれるきっかけは何だったのでしょうか?
すでにこの商品が生まれて2023年で7年目になりました。石井食品では、地域と旬以外の時期も、ハンバーグやミートボールのために、年中玉ねぎを仕入れて加工しているため、全国各地域の農家さんとの繋がりがあります。そんなご縁やご紹介を受ける中で出会ったのが、白子玉ねぎの生産者の方です。
そして2017年から、白子たまねぎというブランド名を前面に押し出した商品の販売をスタート。初年度は10トン程度だった玉ねぎの仕入れ量も、今年は約5倍の50トンを超える予定です。
商品開発も、毎年白子町の生産組合の方々に試食をしていただきながら改良を重ね、現在の「千葉白子町の新玉ねぎをつかったハンバーグ」になりました。2022年には発売から6年目で累計の販売数が100万食を突破し、SNSでもその年の白子玉ねぎハンバーグを待ち望んでくださる方の声が見られるようになってきました。
4年ぶりに復活した「白子たまねぎ祭り」で活気が戻る
— 改めて、「新玉ねぎ」ってどんな状態の玉ねぎなのでしょうか。
noteをご覧のみなさんは、「極早生(ごくわせ)」「早生(わせ)」「中生(なかせ)」「晩生(おくて)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?旬とされる季節の中でも早く収穫できるものなのか、遅めの収穫時期のものなのかを表す言葉です。
新玉ねぎとして出荷されるのは、中でも「極早生」「早生」を乾燥させずに、水分量が多いまま出荷しているものです。
— お恥ずかしながら「白子玉ねぎ」を通して初めて「白子町」という名前を知りました。玉ねぎの中でも、白子町産の特長はありますか?
白子町の畑は砂地で、海も近くミネラルが豊富です。砂地で水はけもよく、玉ねぎが大きく育ちやすいのだそうです。石井食品で扱う玉ねぎの他の産地は、もう少し湿り気と保水力がある土の畑のエリアが多く、白子町よりはぎゅっと小粒の玉ねぎが育ちます。
白子玉ねぎは特に水分量が多いブランドで、固いものにぶつけると水分が出てきてしまうほどです。以前、机の上においたまま外出から戻ったら、水分が出てしまい、オフィスに玉ねぎの匂いを充満させてしまったことがあります。
— それほど水分量が多いのですね!今年は収穫体験にも参加したようですがいかがでしたか?
今年は石井食品の入社1〜2年目の社員を中心に参加してきました。収穫後の玉ねぎは、雑菌が入らないように頭の部分を切り落とします。そうすると切ったところが徐々に締まってくるのが目で見てわかります。
千葉県の方々は、白子玉ねぎの旬の時期を知っていて、時期になると近隣の市町村からも車で買いにくる方がたくさんいらっしゃいます。農家の方が畑沿いで販売している姿を今でも見かけますよ。
今年は4年ぶりに「白子たまねぎ祭り」も開催され、活気に溢れていました。石井食品もハンバーグを広めるため参加させてもらいました。
素材を活かし、地域とつながる石井食品のこだわり
— これからの時期、石井食品からは「山梨大月市産新玉ねぎを使ったハンバーグ オニオントマトソース」や「茨城筑西市の館玉ねぎを使った ハンバーグ デミグラスソース」もお目見えします。これらの地域と、白子玉ねぎの違いはありますか?
山梨県大月市の玉ねぎは、白子玉ねぎと比べると、ぎゅっと旨みが詰まった小粒の玉ねぎです。見た目が違いますよ。また茨城筑西市の館玉ねぎは肉厚で、熱を入れても風味が逃げない玉ねぎです。
それぞれの地域で違いがあるので、味付けや玉ねぎの切り方も異なる方法で仕上げています。素材を楽しんでいただくためのハンバーグを作るのが石井食品のこだわりですからね。
— 社歴が長い三谷さん。「地域と旬」のプロジェクトの初期から取り組みを見てきたと思います。このプロジェクトにかける三谷さんの思いを聞かせて欲しいです。
例えば白子町の玉ねぎは、千葉県白子町の近隣市区町村の方には有名ですが、全国での認知度はまだまだ高くありません。たくさんの方に召し上がってもらえるブランドへと成長していますが、より広く知っていただかないと「千葉県白子町」というブランドがなくなってしまう危機感を持っています。
なぜなら、白子町産の玉ねぎも、市場を通ってしまうと「千葉県産」と大きくまとめられて売られてしまう場合があるのです。そのため、白子町のブランドを名乗れる玉ねぎは、白子町の道の駅で直接販売したり、「白子たまねぎ祭り」で販売するなど直接消費者の方に届ける必要があります。
その反面、白子玉ねぎは簡単に全国どこでも食べられるものではありません。より広い地域のお客様にお届けするのをご支援するのが石井食品の役目です。石井食品の地域と旬の商品には、
というように、丁寧に県名から商品名に入れ、お客様に地域を認知してもらえるように取り組んできました。また、「白子玉ねぎは知っていても、ハンバーグを知らない」という方も多くいますので、ハンバーグの認知向上にも力を入れていきたいですね。
また、核家族の増加や共働きの家庭の増加から、「調理」自体をする人が減ってきていると思います。そんな、素材として白子玉ねぎを手に取る機会が少ない人にも、白子玉ねぎを知ってもらい、口にしてもらうきっかけとして、加工品を届けることは石井食品の大事な使命ではないでしょうか?時代の流れに合わせて提供するものも変化させ、「そろそろ白子玉ねぎの時期だ」と思い出してくれる人を増やしたいです。
— この取り組みに参画している農家の方々からはどんなお声をいただいていますか?
石井食品が直接生産者の方々から仕入れ、加工しお客様に届けることで、頑張りが見えるようになってきたと聞きます。とても上手くできた年でも、他の近隣エリアの玉ねぎと一緒に出荷されてしまうと個々の価値に反映されづらくなってしまいます。
石井食品とともに商品開発を行い、お客様の声に触れることがやりがいにつながっているようなので、我々ももっと頑張らねばと思います。
— 先ほど話にあがった山梨県大月市のハンバーグについて教えてください。山梨県大月市のハンバーグは、農家の方だけでなく行政や学校との関わりも大切にしていますよね。
大月市のハンバーグは、毎年学校給食へ提供する活動を行うなど、「食育」にも役立ててもらっています。大月の玉ねぎを将来にも繋いでいくために、行政とも議論しています。
大月の玉ねぎは「地域と旬」のプロジェクトの中でも、初めて事業化した商品。最初は1軒の生産者さんとのお取り引きでしたが、大月市にもご協力いただき参画する農家さんの軒数を増やす取り組みを行ってきました。徐々に地元の人からもこの取り組みや商品が認知されていることを実感しています。
地域の恵みを定番商品にも
— 今年は定番の「イシイのおべんとクンミートボール」の原材料としても「白子玉ねぎ」が使用される予定と聞きました!この経緯も教えてください。
千葉県の八千代工場で生産するミートボールで使用する予定です。
私の所属するチームの名前は「素材価値開発部」。旬の素材を「地域と旬」の商品だけでなく、定番の商品に取り入れていく挑戦をしています。
一般的には、必要な玉ねぎを集めてくれる業者の方に量と価格を伝え、原材料を確保する会社が多いと思います。しかし、石井食品は時期ごとに適切な地域の生産者さんと対話し、直接仕入れることもあります。一見手間のかかる方法ですが、このこだわりこそ「素材価値開発部」を名乗る理由なのです。
この取り組みは、もちろん今後も加速していきます。お客様が何気なく食べているものにも「旬」が詰まっている。普段の食事からそんなことを感じていただけるように努力したいです。